厚労省再生医療細胞加工施設
再生医療等提供認定施設(脂肪・表皮・軟骨・線維芽細胞・PRP)

医療協会適正認定施設
美容外科・形成外科・再建外科・麻酔科

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自家培養軟骨細胞組織(隆鼻治療)

自家培養耳介軟骨を用いた隆鼻の手術

2002年に自家培養軟骨細胞組織による鼻の手術が当院により開発されました。この培養方法は矢永博子の日本ならびに世界主要各国の特許が完了し、当院オリジナルの治療方法であり、他では受けられない画期的な治療です。本人の耳の後ろからわずかの耳介軟骨(約8×8mm)を採取して、隆鼻に必要な量の軟骨細胞を細胞培養の技術を用い、体外で大量に培養できます。軟骨細胞の培養法は特許を得た方法でおこなわれ、培養期間は約2ヶ月かかります。培養したゼリー状の軟骨細胞を、下腹部の脂肪の下に一旦移植します。

その後半年~1年後には硬い軟骨の塊となります。これを体外に取り出して造形し、鼻、耳、あごなどで必要な場所での再建の材料とします。この治療方法の一番よい適応は隆鼻のためシリコンインプラントを入れた後鼻先の皮膚が薄くなったり、赤くなったり、腫れたり、またインプラントを触ると動くような場合です。

この場合放置しておくとインプラントが皮膚の外にでてくることがあります。隆鼻術は一般的にはシリコンインプラントが用いられています。鼻の付け根から鼻先までの隆鼻を行う場合シリコンは加工がしやすく厚みをわきまえれば非常に優れた素材です。しかし、鼻先は皮膚が薄いため長年のシリコンインプラントの下からの圧力で皮膚がより薄くなりシリコンインプラントが露出することがあります。

また、10年くらい経つとシリコンインプラントの周囲に石灰沈着(さわるとがさがさする)が生じてきます。こうした症状の方にはこれまで、シリコンインプラントを抜去する方法しかありませんでした。自家培養軟骨細胞組織は、上記の問題を解決する選択肢のひとつとなります。

当院で手術を受けられた方でご本人の同意が得られた方の症例をご覧ください。


自家培養軟骨細胞組織による治療の流れ(隆鼻術:two stage operation)

  1. まず受診していただき、自家培養軟骨細胞組織による治療の適応かどうかを診断します。この時点で治療を希望される場合は  採血し、術前検査として感染症(ウイルス肝炎・梅毒血清反応・HIV etc)・一般検血・凝固系検査を行います。結果が出るまで数日かかります。感染症検査で陽性の反応が出た場合は他の方の培養細胞への感染の危険性を考慮し、残念ながらこの治療はお断りしております。やむを得ないものと考えています。
  2. 次に日をあらためて軟骨採取を日帰りで局所麻酔下で行います。軟骨の採取は、耳のうしろの目立ちにくい場所を選んで行っています。軟骨採取と同じ日に培養を行うために必要な血液を採取します。軟骨採取部の傷の処置はご自身で行っていただいています。縫合を行いますので約1週間後に抜糸が必要です。遠方の方は、この時点の抜糸はお近くの医療機関にお願いすることも可能です。
  3. 軟骨を採取してから次の移植手術が可能な状態まで最短で約2ヶ月の培養の期間が必要です。培養に時間が かかるケースもありますし、せっかくいただいた軟骨から移植に適した細胞が育たず、もう一度軟骨を採取するケースもあります。(これまで1人ありました)ヒトの組織を培養するということは、図面を引いてモノや建物を作ることとはかなり異なります。計画・予定通りにいかないこともあります。まずこのことをご理解下さい。植物に水や栄養を与え、お日様にあたるように大切にして気遣いながら素敵な草花を育てていくような過程をイメージして下さい。
  4. 細胞の状態や患者さんご自身のご予定を調整しながら手術日を決定します。できるだけ患者さんの希望に沿うように手術日を決めたいのですが、なによりも優先しなければならないのは培養細胞の状態です。不十分の状態で手術を無理に行ってもよい治療結果は得られません。
  5. 自家培養軟骨細胞組織移植手術 (Two Stage Operation)

第1段階
(耳介軟骨を採取して約2ヶ月経過後です。)ゼリー状となった自家培養軟骨細胞組織を下腹部の脂肪組織の間に移植します。この手術は局所麻酔のみで日帰り手術として行います。皮膚切開は約2.5~3㎝程度で、傷口は縫合します。手術日を含めて3日間の抗生物質の点滴と局所の経過観察を行いますので通院が必要です。特に問題なければその次は手術後1週間後の来院、抜糸を行います。

第2段階
(第1段階の手術から約6ヶ月以上経過してからです。第2段階の手術はご本人のスケジュールにより遅くなってもかまいません)この第2段階の手術も日帰り手術ですが、全身麻酔が必要です。下腹部に移植されていた軟骨細胞は成熟し硬くなりブロック状となっている時期で、これを取り出します。(このホームページの症例集を参考にしてください)鼻にシリコンインプラントの入っている方はシリコンインプラントを摘出し、再建に必要なボリューム、形状に軟骨のかたまりを造形し、これを鼻に移植します。

術後はプロテクターを着用します。手術日をふくめて3日間の抗生物質の点滴を行います。下腹部、鼻の傷は縫合していますので術後1週目に抜糸します。この抜糸は必ず当院で行います。術後のプロテクターは5日間は昼間も夜も一日中装着します。それ以降は昼間は何もつけず夜のみテーピングを1ヶ月行います。現在、two stage operation を行うことで鼻、あご、耳の再建、こめかみ、ほほを高くする手術が可能となりました。

※注意してください!

自家培養軟骨細胞組織の治療をさまたげるものとして、感染をおこすこと(細菌感染により自家培養軟骨細胞組織が溶けてしまいます)外傷などでを打撲すること、医師の指示に従わず、外固定を自らはずされたり、気づかいうちに外固定がずれる、手術した鼻の部分が気になりすぎて、頻繁に手でさわり続けてしまうことなどが挙げられ、望ましい形状にならない場合があります。

飲酒、スポーツなどは指示あるまでは禁止です。できるだけ治療のさまたげになるようなことがおこらないよう私たちも配慮しておりますが、移植後の療養期闘は安静にされ無理のない生活をおくっていただくことについても、患者さんご自身の自覚と努力が必要です。

鼻の穴の中の傷の抜糸は術後7日目を目安に行います。この傷は細い糸でたくさん縫合してありますので、この手術に関与した医師でないと抜糸が困難なので当院で行っています。以上のスケジュールからすると自家培養軟骨細胞組織による治療を行う場合、遠方からこられる場合は手術日を含め7日間の福岡の滞在となります。(経過良好の場合は途中数日間よそへ行かれたり、一時的に帰宅されたり、離れることも可能です。)仕事や学業への復帰の際はまわりの方には『鼻をぶつけた』『鼻を骨折した』などの説明をされているようです。

治療結果シリコンインプラントを入れている方のインプラント抜去・自家培養軟骨細胞組織による治療結果は、このホームページ上の症例集を見ていただければある程度イメージできると思います。また、実際に来院していただき、診察した上で、院内に保存しているこれまでの症例集に基づいてご説明いたします。


(Q&A)患者さんからよく受けるご質問

質間を受けることが多い内容についてあらかじめ回答しておきます。

手術後の腫れはどの程度ですか?
必ず腫れます。手術後3日目くらいがピークです。その後少しずつ術後7日目くらいにかけてゆっくりひいてゆきます。その後はわずかな腫れが1ヶ月くらいまであります。仕事への復帰は術後1週をすぎてからがよいと思います。(それでも少し腫れている状態です)腫れることが、全く受け入れられない方はの手術をうけるべきではありません。
鼻先を何ミリ、鼻根部を何ミリあげてこういう鼻にできますか?自分の希望のデザインどおりの鼻にできますか?
ご本人のもってうまれた鼻の形、過去にいれられたシリコンインプラントの周囲につくられたカプセルの状態、瘢痕拘縮の状態はこの治療の結果に大きな影響を及ぼす要因です。これらを無視してご自分の希望のデザインどおりにというのはかなりむずかしいことです。その制約のなかでできるだけ良い形をめざします。Two stage operationが開発されてある程度の希望にそえるようになりました。しかし、それでもやはり限界はあることをあらかじめご了承ください。
吸収されて無くなってしまうことはないですか?
現時点で存在するあらゆる軟骨移植(耳介軟骨、肋軟骨、関節軟骨など)と同様、自家培養軟骨細胞組織も若干は吸収されます。それが軟骨移植の運命といえばそれまでですが、現在当院で行っています自家培養軟骨細胞組織two stage operationは以前の注入法よりも吸収の程度がかなり少なくなり、成績が向上、安定してきました。
時間がたって曲がってくることはないのでしょうか?
従来法の肋軟骨移植や腸骨移植などは本来が曲面をもっているものを造形してできるだけまっすぐな形として移植されてきました。時間が経過して曲がってくる例は確かに存在しました。しかしながら、現在当院で行っています自家培養軟骨細胞組織two stage operationによる鼻の再建術後の経過観察では現時点で彎曲が問題点として生じている例はありません。
時間がたって追加で移植することはできるのでしょうか?
細胞は凍結保存できますので希望により保存が可能です。(別途保存料が必要です)この場合、保存しておいた細胞の培養をスタートラインから再度やり直す作業となります。
どんな場合がこの治療のよい適応でしょうか?
異物(シリコンインプラントなど)が長期にはいっていて鼻先が赤くなったり、炎症を繰り返した既往があり、皮膚が薄くなってきていたりする場合です。こういうケースは通常インプラントを抜去することが対処方法ですが、抜いてしまうと、鼻先がへこんだような状態になります。こういうケースに私の開発した自家培養軟骨細胞組織two stage operationが良い適応となります。 とくに、もともと相当に鼻の低い方や大きなインプラントを無理して長期間入れていた方にはこのような場合の代替案がなかなかみつからなかったのです。あまり神経質な方、あれこれ細かいことにこだわりすぎる傾向のある方はこの治療は適さないと思いますのでご遠慮ください。何もしないでそっとしておくか、ただ、インプラントをぬいてしまうかのどちらかでいいと思います。なんとなく鼻を高くしてみたいとお考えの方には、ヒアルロン酸の注入や通常のシリコンインプラントで 十分と思います。 私たちが東洋人である以上、持って生まれた骨格、鼻の形はどうにも変えられない部分があります。自家培養軟骨細胞組織はそういう根元的な問題点は克服できていません。しかし、再建の材料として極めてすぐれている。現時点ではそういう認識です。

治療費

自家培養軟骨細胞組織による治療は健康保険適応外です。通常のシリコンインプラントによる隆鼻術や従来法の耳介軟骨、側頭筋膜移植による方法よりも高額になります。必要な術式、必要とされる自家培養軟骨細胞組織の量により患者さんそれぞれ治療費は異なります。最終的には診察をおこなったうえで決定します。

決して安い治療費ではありません。治療にはそれなりの時間も必要です。遠方からわざわざ来ていただく必要もあります。そしてこの治療にも限界はあります。ご自分でよく考えられて決断されてください。でも、この治療は世界的にも私にしかできない治療です。