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2006年7月  「女性セブン」 掲載分より ~ Vol.2

2006年7月6日
メディア

– 美しい造形物としての乳房を作らなくては –

現在、日本人女性がかかるがんとしては、罹患率がもっとも高い乳がん。医療技術の進歩により乳房を残す温存療法も可能になり、多くの人がその恩恵に預かることができるようになった現在。その一方で、進行度や腫瘍の位置によっては、乳房をほとんど切除しなければならないケースも少なくない。乳房の喪失は、想像以上の苦しみが伴う。そして、その苦しみを救う医療として、ここ10年あまりで急速に注目を集め始めたのが乳房再建だ。乳房再建とは切除してしまった乳房や乳輪、乳頭を新たに作る(再建)という治療。アメリカで始まり、二十数年前から日本でも行われるようになった。

いま日本で行われている方法は、自家組織による再建と、組織拡張器を用いた人工乳房による再建の2種類だ。自家組織による再建は、患者自身の体の一部(腹部や背中など)の皮膚と脂肪と筋肉を胸に移植する方法だ。自分の体の一部であるため違和感が少ないが、組織を供給した部分に大きな傷跡が残り、手術や入院にも時間がかかる。一方、人工乳房による再建は、組織拡張器という生理食塩水を注入する袋のような装置を胸の筋肉の下に入れ、少しずつ皮膚をのばし、ある程度まで大きくなったら装置と人工乳房とを入れ替える方法である。胸の傷は小さく手術時間や入院期間が短いといった利点もある。ただ、いずれの乳房再建も、日本で実践している施設は少なく、スペシャリストは十数人程度といわれており、まだまだ再建に踏み切る人も少ない。その数少ない専門家のなかで現在、年間120から160の症例をこなす乳房・乳頭乳輪再建のエキスパートであり、きれいな乳房の形と乳輪、乳頭を再現してくれるのが、矢永医師だ。

矢永医師は現在、麻酔科医の夫・克さん(42才)と小倉で『矢永クリニック』を開業、今年の7月で6年目にはいる。乳がん手術後の乳房再建・乳頭乳輪再建のほか、一般的な形成外科手術や、培養表皮・培養軟骨移植などの再生医療、シワやたるみの治療、フェイスリフトなど美容外科手術を行っている。聖マリアンナ医科大学大学院(神奈川県川崎市)で細胞培養や組織再生を学んだ矢永医師は、聖マリアンナ医科大学形成外科、久留米大学形成外科講師を経ながら、乳房再建と再生医療をライフワークとして取り組んできた。’01年に整形外科医の克さんとともにクリニックを設立。1年後、克さんはより安全で患者が安心できる手術を目指し、麻酔科医をメインの仕事に切り替えた。克さんはいう。 「独立したのは、自分たちの理想とする医療をやりたかったからですね。実際、クリニックで一緒に仕事をするようになって、“彼女は途方もないことをしようとしている”と感じるようになりました。ですから、彼女が患者さんの希望に応えるためには、僕が麻酔をメインの仕事とし、サポートに回ることがベストだと、自然に思うようになっていったわけです」(克さん)

なぜ、矢永医師は乳房再建をライフワークとしたのか?

「私が最初に乳房再建手術に携わった20年ほど前は、乳がんの患者さんの乳房を大胸筋ごと大きく取ってしまうハルステッドタイプの手術が主流でした。手術を受けた患者さんはみなさん、女性としての自信を大きく失っていました。でも乳房を再建すると、まったく別人のように明るくなる。それに衝撃を受けたのかもしれません」(矢永医師) 当時はいまとは違い、一般的にはただお腹や背中の皮膚・脂肪・筋肉を胸に充填するだけの手術が行われていた。それでも患者さんは喜んだという。しかし、乳房再建に関わり続けた矢永医師はやがて、“乳房のようなもの”を作るだけではだめ、美しい造形物としての乳房を作らないと、患者さんは満足しないと思うようになった。「それで一生懸命、どうしたらきれいに乳房を再建できるかな、と考えるようになったんです」(矢永医師)

その一途でひたむきな思いから矢永医師が生み出したのが、より自然な乳頭乳輪を再生することであった。太腿のつけ根の皮膚を移植して乳輪を作製し、人工骨を使って乳頭の高まりを作る技術。乳頭は花びらと花のつぼみから得た発想で、それにより「より自然で美しい」乳房の再建が可能になった。ほかにもひとりひとりの乳房、乳輪、乳輪に様々なアイデアや技術が生かされているという。乳房再建は乳がんをわずらった女性の、一筋の光である。とはいえ、新しい乳房はすぐにできるわけでも、簡単にできるわけでもない。再建の手術にはタイミングによって、乳がんの摘出手術時に組織拡張器を入れる同時再建と、手術後に再建する二期再建がある。いずれの場合も、最初の再建手術をしてから乳房の形がある程度整うまでおよそ半年。それから乳輪や乳頭の手術を行うため、腫れがひいて落ち着くまで、数か月から1年はかかってしまうという。