自家培養 線維芽細胞注入法
再生医療を用いた(たるみ、しわ、くま、ホウレイ線)
「自家線維芽細胞の水光注射はじめました」
1.自家培養線維芽細胞注入法
(通常の注射法に加えて水光注射もおこなっています)
自家培養線維芽細胞注入はご自身の皮膚のごく一部を採取して、体外で線維芽細胞を培養して増やしたのち、ご自身の皮膚へ注入するという画期的な新しい治療です。本治療法はエイジング(加齢)によるしわを改善します。
線維芽細胞は、皮膚真皮・皮下組織の構成成分でコラーゲンを産生する細胞です。自家培養線維芽細胞注入は、あなたご自身の線維芽細胞を注入し、その注入した線維芽細胞がコラーゲンなどの肌の構成成分等を産生することで、新しく肌を再生することが期待されます。
これまで行われてきた治療は、ヒアルロン酸やウシコラーゲンや他家コラーゲン等の異物注入が行われてきました。しかし、これらは異物なので体の中で次第に分解、吸収されていくため、定期的に注入を繰り返す必要がありました。注入する細胞はあなたご自身のものなので、拒絶(体内のものを異物と認識して排除すること)されることなく効果が持続することが期待されます。
1990年頃より、にきびやしわなどに対して培養線維芽細胞注入が行われており、その効果が報告されています(Watson D et al, Arch Facial Plast Surg. 1:165-170, 1999)。米国では1990年頃よりにきび、しわなどに対して行われており、2011年にIsolagen社 (商品名 LavivTM)が米国医薬食品局(FDA)より自家培養線維芽細胞製品の承認を取得しています。
治療の対象:顔面の表皮〜真皮層にあるしわ(目尻、額、口周り)、くまが対象になります。
水光注射の場合はお顔全体に注入できるので肌質が若返ります。
実際の治療効果に関しては、顔面の比較的小しわを対象に、培養線維芽細胞注入後、最速で1ヶ月、通常3~6ヶ月で改善を認め、最長1年3ヶ月の経過観察で効果の発現を認め、また皮膚超音波断層検査では真皮層が密になっていたという報告があります現時点での科学的水準に基づき可能な範囲で検討されていると考えます。
この治療の限界
培養線維芽細胞は、注入されたあとに、その場所で約3ヶ月〜6ヶ月くらいの時間をかけて自己のコラーゲンを産生します。培養線維芽細胞が生着して自己のコラーゲンが産生されて皮膚が厚くなるため、しわやくすみが目立たなくなります。しかし、どの程度改善するかは個人により差があります。これが現時点での治療の限界といえます。
また、ホウレイ線やマリオネットの深いシワはPRP注射の併用療法をおすすめいたします。
お顔全体に皮下組織のボリュームが必要な場合は微小脂肪(マイクロリポ)注入などが適応になります。
2.自家PRP注入療法
自家多血小板血漿( Platelet rich plasma: PRP)を用いた治療(以下「本治療:PRP」とします。)
PRPはご自身の血液の一部を採血して、体外で血液の中の血小板を集めて、体内(皮下)へ注入するという治療です。本治療の対象疾患等は、顔面(こめかみ、眉間の上、目の上、目の下、頬、ホウレイ線等のしわです。PRPは、自家移植なので異物反応が少なく、局所にサイトカインを放出し、毛細血管の新生、創傷治癒促進、組織再生を促すといわれています。また、コラーゲンの産生や皮膚に弾力を与えるエラスチンを産生するため、瘢痕部や陥凹部、しわの治療に有用と考えられています。
当院ではご自身の血液を採血したのち、PRPの作成は当院にある培養細胞研究施設で行います。PRPは血液を遠心分離することで得られる血小板を濃縮させた血漿であり、さらに血小板に凝集反応を起こし活性化させることで、創傷治癒に有効なサイトカインや増殖因子を放出します。ヒトの血液のにはVEGF, PDGF, EGF, IGF-1, TGFα, TGFβ1, bFGFなどの増殖因子が多く含まれています(Winter, Nature 193:293-294.1962)。これらは創傷治癒因子として知られています。
実際、PRPは皮膚潰瘍、糖尿病性潰瘍、褥瘡の治療に使用されてきました。また、歯科領域、整形外科領域(スポーツ選手の腱の断裂の治療など)に用いられています。形成外科領域では抗加齢医療として汎用されており、顔面のしわ、たるみ、ホウレイ線に対して使用されてきました。(Cervelli, Tissue Engineering:Part C, 15:625, 2009、Anthony, Facial Plast Surg, 25:270, 2009。
本治療ではご自身の血液を採取して、遠心器を用いて血液を遠心して血小板を集積し、皮下へ投与します。創傷治癒促進のため薬剤として用いられているb−FGF製剤(商品名:フィブラスト)を少量添加すると、PRPとの相乗効果で皮下に脂肪が形成され、維持期間が長くなります。ここ数年b−FGFを用いた治療が循環器外科、血管外科、耳鼻科などでも臨床に使われ始めていて、良い結果が報告されています。ただし、持続期間は個人差があります。そのことを理解いただき注入を受けられて下さい。
この治療の限界
PRPを注射した部位にサイトカインや増殖因子が放出されたあとに、コラーゲンやエラスチンが産生されますので、効果が2ヶ月〜3ヶ月で安定し、自己のコラーゲンやエラスチンが産生されて皮膚が厚くなるため、しわやくすみが目立たなくなります。しかし、本治療は深いしわやたるみを改善する治療ではありません。
その場合はレーザー治療や手術療法(脂肪注入やフェイスリフト)が適応になります。どの程度改善するかは個人により差があります。これが現時点での治療の限界といえます。この治療はあくまで補充療法ですから、あなたの要求するレベルのすべてをみたすことはないと思います。
費 用
使用する範囲と量により料金は異なります。