乳頭・乳輪再建について
目次
当院で行う乳頭乳輪再建について
当院はご本人の自家組織で乳頭と乳輪を同時に再建します。
新しく乳頭の高まりを作る方法(矢永法)と健側の乳頭を移植する方法(コンポジット移植法)を行っています。
下記のいずれの方法も手術は1回で終了します。基本的に保険適用で行っています。
1)新しく乳頭の高まりを作る方法(矢永法)
健側の乳頭を用いないで、新しく乳頭切除側の皮膚で高まりを作って乳頭を再建する方法です。乳頭が小さい場合、健側の乳頭を切除したくない場合、両側乳癌のため両側の乳頭がない場合に適応になります。これまでの手術法では乳頭の高まり(高さ)を保つのが難しかったので新しい方法を開発しました。
再建を予定している部位の皮膚を薄く剥離して、2葉の脂肪つき皮弁を持ち上げます。2葉の肪つき皮弁の中央に人工骨を置きます。それらを皮弁で包みます。乳輪は大腿基部の内側のやや色がついた部位の皮膚を採取して移植する方法を用いています。胸の皮膚はぴかぴかした質感ですが、乳輪はざらざらした皮膚の質感なのでそれとよくにた大腿基部の内側皮膚を移植した方が自然な色と質感になります。
後療法 | 乳頭がつぶれないよう抜糸などが終了したら、3ヶ月は1日中〜6ヶ月くらいは昼飲みスポンジで乳頭乳輪を保護します。 |
矢永法(真皮脂肪弁+耳介軟骨or人工骨を用いた乳頭乳輪再建)
側面から見た手術中の写真
2葉の皮弁を挙上し、中央に軟骨や人工骨を置き2葉の皮弁で包んで、その上に皮膚移植をします
矢永法で再建した乳頭乳輪の術後の状態、自然に近い色合いと高さが保たれています。
矢永法は欧米の乳頭乳輪の教科書にも掲載されています
- Tanabe(Yanaga), H Plast. Reconstr. Surg., 100: 431 (矢永法 I)
- Yanaga, H. Plast. Reconstr. Surg. 112(7): 1863-1869, 2003(矢永法 I I)
- Yanaga, H. Nipple-areola Complex reconstruction. Springer Chapter 48. 393-402-1869, 2018
2)健側の乳頭乳輪を移植する方法(コンポジット法)
乳頭を半切して患側へ移植する再建法です。健側の乳頭が大きい場合は健側の乳頭を移植する方法が適応になります。あくまで患者さんがこの方法を希望することが前提となります。患者さんが健側を傷つけたくない場合や将来お産を希望している場合は適応となりません。また、健側の乳頭が小さい場合や両側の再建例では行えません。
乳輪に関しては大腿基部の内側のやや色がついた部位の皮膚を採取して移植する方法を用いています。胸の皮膚はぴかぴかした質感ですが、乳輪はざらざらした皮膚の質感なのでそれとよくにた大腿基部の内側皮膚を移植した方が自然な色と質感になります。
乳頭乳輪再建法についてもっと詳しく知りたい方は下記をご覧下さい。
乳頭乳輪の再建法の詳細
乳頭乳輪再建は女性のシンボルであり、乳房再建の最後の仕上げになります。再建した側の乳房の皮膚に反対側の健側乳頭乳輪と対称性にその形を描きます。そして皮膚に皮下脂肪をつけた組織(皮弁)を立ち上げて乳頭の丸みを作ります。その周りに乳輪を作ります。
大きく分けて3つの方法があります。
- コンポジット移植+皮膚移植
- 局所皮弁と植皮とタトゥー(入れ墨、タトゥー)を組み合わせる方法
- 真皮脂肪弁に植皮をする矢永法(タトゥーを用いない)
1)コンポジット移植+皮膚移植
健常の乳頭の一部を採取して患側へ移植する再建法です。健側の乳頭が大きい場合に健側の乳頭を半切して患側へ移植する方法です。色調、質感が似ているのは健側の乳頭です。ですから、健側の乳頭が大きい場合はコンポジジット移植法を第一選択とします。しかし、あくまで患者さんがこの方法を希望することが前提となります。
乳頭の採取方法はV字楔状、垂直に半切、先端切除する方法があります。乳頭が横に大きい場合はV字楔状、垂直に半切を行います。乳頭が長い場合は先端を横に半切して乳頭を採取します。植皮を行わない場合は乳輪部に人工的にtattooする方法もあります。
健側乳頭を半切して採取する方法のシェーマ
楔状、垂直に半切、先端切除
-適 応-
①健側の乳頭が大きい
②健側の乳頭が下垂している
③患者さんが希望する
-適応外-
①健側の乳頭が小さい
②両側乳癌で乳頭乳輪が両側性にない
③将来授乳の可能性がある
④温存例で乳頭部に放射線照射されている
⑤患者さんが希望しない
-利 点-
①組織が同じである
②色調、質感が同じである
③長期的にはある程度projectionが保たれる
④健側の乳頭縮小を兼ねる
-欠 点-
①健側の乳頭を傷つける
2)局所皮弁とタトゥー(入れ墨)を組み合わせる方法
この手術法はいろいろな種類がありますが、スター皮弁(星の形、三つ葉に似た形をしているためその名前がつきました)とスケート皮弁(スケート靴の形をしているためその名前がつきました)が一般的に用いられています。
スター皮弁はタトゥーを行い、色を付けます。
-適 応-
①健側の乳頭が小さい
②両側乳癌で乳頭乳輪が両側性にない
③将来健側の授乳の可能性がある
④患者さんが希望する場合
-適応外-
①患側皮膚に術後照射されている場合
②患者さんが希望しない場合
-利 点-
①健側の乳頭を傷つけない
②皮膚移植がない(手術法により植皮がある場合もある)
-欠 点-
①二期的にタトゥーが必要です
②乳頭形成の手術と乳輪形成術と2回手術が必要です
③長期的に見ると、皮弁は柔らかい組織で支持組織がないため、乳頭が平らになります
④タトゥーは数年たつと薄くなるので追加のタトゥーが必要
その他の乳頭再建法
スター皮弁のシェーマ
三つ葉、星形の両側の皮弁を合わせて縫合し、3つ目の皮弁で蓋をして丸みを作る。
術後3ヶ月以上経過して二期的に乳頭乳輪部にタトゥー(入れ墨)をいれて色をつけます。タトゥーは数回行います。タトゥーについては別の項目で詳しく述べられていますので参照して下さい。
スケート皮弁のシェーマ
両側の皮弁を持ち上げて中央で縫合する。乳輪の部位には植皮をする。
術後3ヶ月以上経過して二期的に乳頭部にタトゥー(入れ墨)をいれて色をつけます。タトゥーは数回行います。タトゥーについては別の項目で詳しく述べられていますので参照して下さい。
3)真皮脂肪弁+耳介軟骨、または人工骨移植+植皮(矢永法)
前述の皮弁だけで乳頭をつくると支持性がないため1年以上すると高さがなくなり平らになってきます。そこで皮弁の中央に軟骨や人工骨(医療用)をいれて、皮弁で包み込み支持性を保つように工夫した再建方法です。
乳頭の高さがでます。乳頭と乳輪の両方に植皮をします。
-適 応-
①健側の乳頭が小さい
②両側乳癌で乳頭乳輪が両側性にない
③将来授乳の可能性がある
④患者さんが希望する場合
-適応外–
①患側皮膚に放射線照射されている
②患者さんが希望しない場合
-利 点-
①健側の乳房を傷つけない
②乳頭の高さが得られる
③手術が1回で終了する
④タトゥー(入れ墨)をしないでよい
-欠 点-
①植皮が必要である
②人工骨は皮膚のうすい方な放射線照射したかたは露出することがある(3%)→人工骨を抜去すればよい
患者さんからよく受ける質問(Q&A)
- 「移植に用いる皮膚は大腿のどのあたりからもってくるのですか?
- 太ももの内側の股の部分の色が黒いところです。外陰部ではなくその外側になります。
- 大腿の皮膚採取部の傷あとは目立ちますか?
- 盲腸の傷痕のように1本の線状になります。大腿の内側はしわがある部分ですので、しわに傷が隠れて傷あとはあまり目立ちません。
- タトゥーは保険診療ですか?
- タトゥーは保険適用でないので自費診療になります。数年経過すると薄くなるので再度タトゥーを入れる必要があります。
- 乳頭乳輪の手術のあとどのくらいしたら仕事やスポーツができますか?
- 乳頭乳輪はつぶれないようしばらくガーゼやスポンジなどで保護しますが、事務仕事であれば1週間後からは可能です。スポーツや激しく動く場合は1ヶ月後から可能です。
- 再建した乳頭に感覚はありますか?
- 再建した乳頭の感覚は通常ありません。長期的に見ると周囲から神経が回復してさわると分かる程度に回復するようです。
- タトゥーは数年すると色が消えるとのことですが、植皮の色はどうなりますか?
- 植皮は個人差があります。色がそのままの方もいれば薄くなってくるかたもいます。ただ、タトゥーのように数年で消えることはないようです。
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